公開日 2024年12月27日
第121回島根大学サイエンスカフェ
スポンジ材料のはたらき~除湿機から温暖化問題の解決まで~
日時:令和6年11月20日(水)16時~17時10分
講師:島根大学 材料エネルギー学部 准教授 澤野 卓大
第121回島根大学サイエンスカフェは、材料エネルギー学部の澤野 卓大 准教授を講師に迎えて、「スポンジ材料のはたらき~除湿機から温暖化問題の解決まで~」をテーマにオンラインで開催しました。身の回りの小さな穴が空いた物質がどのように私たちの生活に役立っているのか、持続可能な社会を作るために貢献するのかについてお話しました。
ざる、スポンジ、発泡スチロールのように多くの穴が空いた物質は「多孔性物質」と呼ばれ、小さなものと大きなものを識別する「ふるい」、水などの液体を穴に吸収し閉じ込める「保持」、体積中のほとんどが空気であるため「軽い」といった能力を持ちます。更に目に見えないナノサイズの小さな穴を持つ多孔性物質も身近にたくさん存在しており、中でも有名な「活性炭」、「ゼオライト」、「シリカゲル」の特徴とどんな製品に使われているのかについて説明しました。
細かく不揃いな小さな穴がたくさん空いている活性炭は物質をよく吸着し、マスク、除湿剤、水質浄化、脱臭剤、ホッカイロにも用いられています。ゼオライトは、決まった大きさの穴が空いた岩石で、金属や悪臭を閉じ込める働きがあります。粉末洗剤、肥料や飼料添加物、脱臭、空気中の水を吸収し除湿機にも入っています。なお、天然ゼオライトの国内産出は島根県大田市が有名で年間産出量の多くを占めるそうです。シリカゲルは、ケイ素と酸素から作られる無色透明の物質で水をよく吸収し、お菓子の乾燥剤、カラムクロマトグラフィーといった精製にも使われています。このように身近な役割に留まらず、ゼオライトやアミンとよばれる物質で装飾されたシリカゲルは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素のよい回収方法としても期待されています。
続いて、澤野准教授も研究している現在非常に注目されている新しい多孔質材料である金属有機構造体(MOF)について紹介しました。特徴として、穴の大きさがすべて同じ規則的な構造を持ち、金属と有機物を混ぜて熱するだけで簡単に作ることができます。既に8万種以上が作られ、生物学から有機?無機化学までいろんな研究分野で応用できる無限の可能性があります。更に、これからの新しいエネルギー源として注目される水素の貯蔵、ガスの貯蔵と分離、化合物の分離、薬を目的の臓器に届ける薬物輸送への応用が期待されています。ただ現状では、果物の防腐商品、有毒ガス漏れ防止の製品化のほかには実用化に至っておらず研究途上のものが多いとのことです。澤野准教授も現在MOFを使った身の回りに役に立つものを作る研究を行っており、金属や水素を触媒として利用するためのMOF作成について紹介しました。今後いろいろな可能性をもつ材料によって私たちの生活や環境が豊かになっていく期待が膨らみました。
質疑応答では、参加者から「コストは高いのか?繰り返し使えるか?自然界には存在しないのか?」など、MOFの実用化を期待する質問が相次ぎました。
今回は35名の参加がありました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
澤野 卓大 准教授の講演の様子
【お問い合わせ】
研究?地方創生部 研究推進課
0852-32-9844