第118回島根大学サイエンスカフェ「仕事のストレスとの付き合い方~島大式働き方タイプ診断(ScWAT)から考える~」を開催しました

公開日 2024年08月08日

第118回島根大学サイエンスカフェ
仕事のストレスとの付き合い方~島大式働き方タイプ診断(ScWAT)から考える~
 日時:令和6年7月22日(月)16時~17時10分
 講師:島根大学 人間科学部 人間科学科 准教授 石原 宏

 

 第118回島根大学サイエンスカフェは、臨床心理学が専門の人間科学部 石原  宏 准教授を講師に迎えて、「仕事のストレスとの付き合い方~島大式働き方タイプ診断(ScWAT)から考える~」をテーマにオンラインで開催しました。
 講演では、石原准教授から、働く人のメンタルヘルスをとりまく状況と、本学のこころとそだちの相談センターが地域の企業のメンタルヘルス活動を通して開発した心理尺度「島根大学式働き方タイプ尺度(ScWAT)」についてお話がありました。

 令和4年度の厚生労働省の労働安全衛生調査では、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じる事柄がある人の割合は82.2%となっています。ストレスの内容は性別、雇用形態によっても異なります。メンタルヘルスの不調による休業?退職や労働災害は近年増加しており、社会を支える働く世代(特に20歳~39歳)の自死対策も長年の課題となっています。こうした状況を受けて、労働損失、健康経営という観点から、従業員の健康管理を経営的視点から考え戦略的に実践する企業も出てきました。また、2015年からは、労働者50名以上の事業場において「心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)」の実施が義務付けられ、働く世代のメンタルヘルス不調の予防対策に企業だけでなく国も関心を持って対応している状況です。

 「島根大学式働き方タイプ尺度(ScWAT)」は、「働く人それぞれのパーソナリティの違い(心理学的な個人差)」も「ストレスの内容」に影響を与えるという観点から、個々人の仕事に対する態度の違いを心理学的に測定する尺度です。たとえば業績を上げて有名になりたい、生活を支えるための経済的な目的のみなど、仕事をどのようにとらえているかによって、各個人の仕事に対するストレスの感じ方が変わり、働き方のタイプの違いによってどんな声かけ?対応を求めるかも異なってきます。ScWATは、職場での対人関係にまつわる、「嫌われ不安尺度」、「配慮への期待尺度」、仕事への向き合い方にまつわる「自己抑制尺度」、「完全主義尺度」、「活躍願望尺度」の5つの下位尺度で構成されています。これらの尺度への回答を統計的に分析した結果、「関係志向タイプ」、「ミッション遂行タイプ」、「評価不安タイプ」、「活躍願望タイプ」、「傍観者タイプ」の5つの「働き方タイプ」があることがわかりました。

 石原准教授は、それぞれの働き方タイプの特徴やストレスへの反応について解説し、「自分の働き方タイプを把握することで、自身がストレスを感じやすい状況を理解して、セルフケアに役立てることができるだけでなく、職場にさまざまなタイプの人がいることを知ることで、自分の「働き方」を他者に押し付けることを避けることができる。」とお話しました。最後に、ScWATはWebアプリ化しているが、現在は企業を対象に提供していると説明がありました。

 講演後の参加者アンケートでは、「自身の働き方タイプを認識することが仕事のストレスとの良好な関係を維持できるという視点が大いに参考になった。」、「職場での後輩との関わりにも、自分の主観を当てはめすぎないようにしたい。」など,自己理解と職場での他者との関わりにおいて参考になったことが伺える感想をいただきました。

 今回は65名の参加がありました。参加者の皆様、ありがとうございました。

 
                  石原准教授の講演の様子

                                             

【お問い合わせ】

  研究?地方創生部 研究推進課
     0852-32-9844